「………え?」
蒼玉のような瞳がまんまるに見開かれる。
驚くのも無理はなかった。
いきなりセネルにキスされたのだから。
恋人同士なので無論口付けを交わすことなら今までに何度も有った。
だが、それはいつもアスベルからであり、セネルの方からして来たことはなかった。
それゆえ、アスベルはいたく驚いたのだ。
では、何故セネルは珍しく自分からキスをしたのか?
理由があるとすれば…。
アスベルの赤銅色の髪が太陽の光を浴びて煌めく様が綺麗だったとか。
会話の最中、ふと細められた目がとても優しかったとか。
なんとなく気分が良かったとか。
それは本当に些細で単純なことだった。
重ねられた唇はすぐに離れて行った。
驚きで目をパチクリと瞬かせるアスベルに対し、セネルは頬を染めてプイッとそっぽを向いた。
「…どうしてそっちが赤くなるんだよ?」
自分から仕掛けたくせに真っ赤になって照れているセネルに、アスベルは小さく吹き出した。
「う、うるさいな!」
声を荒げるセネルだが、白い髪から覗く耳まで赤くなっていて、アスベルの口元はさらに笑みを深くする。
「慣れないことするから」
クスクスと笑って、アスベルはセネルの白髪に指を絡めた。
髪を梳く指がくすぐったいのか、セネルは一瞬肩を竦めたが、振り払うようなことはしなかった。
普段からぶっきらぼうで素っ気ないセネルは、自分から触れてくることがほとんどない。
だが、こうしてアスベルが触れることは許容してくれる。
それは、自分を『特別』に想ってくれている証拠であり、アスベルは嬉しく思っていた。
だからアスベルはよくセネルの髪や頬に手を伸ばすし、口付けを落としたりする。
それが、今日はいつもと逆で、セネルの方からキスをしてきた。
嬉しくないと言えば嘘になるが、少しばかり悔しい気がするのも確かだ。
「やっぱり、こういうのは俺がリードするよ。年上だしね」
そう言って、アスベルは赤くなっているセネルの頬へ手を伸ばし、こちらへと顔を向けさせる。
二人の視線が絡み合ったところで、今度はセネルの方が破顔した。
「…よく言うよ。お前だって真っ赤な顔してるくせに」
「え!?」
セネルの指摘を受け、アスベルは自身の頬に掌を触れさせた。
言われてみれば、確かに頬が熱を帯びている。
慣れないことをしたセネルと、慣れないことをされたアスベル。
照れていたのはどちらも同じだったようで。
「「……」」
お互いに赤くなった顔を突き合わせたまま、沈黙が流れる。
そして、同時にはにかむような笑みを浮かべると、どちらからともなく唇を重ね合わせた。
〜〜〜END〜〜〜
↓あとがき↓
拙い上に、マイナーな組み合わせですけど、勇気を出して献上してみました。
(だ、大丈夫かなぁ…??)
こんな素敵な企画に参加出来て嬉しいです☆
どうもありがとうございました!!