「なぁ、どこまで行くんだっ?」
セネルの問い掛けに、前を歩く人物…ヴェイグは返答しなかった。自分への返答がない事が分かると、多少不機嫌な顔をしながらもセネルは口をとじた。
ここはアブソール霊峰。
氷の精霊セルシウスが存在する場所。
故に常に雪に覆われた場所だ。常人には寒くて仕方無く、近寄る事もない場所だ。だが、ギルド「アドリビトム」の面々は依頼上、この場所へ足を運ばなければならない。
セネルもそれは例外ではなかった。
だが、何度かここへ足を運んだところでこの寒さにはやはり慣れない。セネルにしてみれば、依頼ではないこの時間、一刻も早く船に戻りたかった。
「…もう少しだから、辛抱してくれ」
「……」
前方からの声に、セネルは仕方ないという感じに頷いた。霊峰に入り数十分、今から何もせずに帰るのも馬鹿らしい。
細く入りくんだ道を歩きながら、セネルはそう考えていた。
「お前…毎回思うが、寒くないのか?」
「…何故だ?」
「だって、好きでこんな所に入ってるんだろ?」
「…これぐらいの方が、落ち着く時があるんだ」
「…そうか」
元々深入りをしないセネルはそれ以上ヴェイグに追及することはなかった。
ヴェイグも再び口を閉ざし、黙り込む。
「ついたぞ」
「…!」
その場所には、何もなかった。
いや、何もなかったというのは間違いでそこに見えるものが雪の壁と長い一本の氷柱だけだったのだ。
しかし、それにこそ意味があった。
「この氷柱の中…花が咲いてる…のか?」
「あぁ…セルシウスに教えてもらったんだ」
「真っ白な花が…」
氷柱の中には白い花が咲いていた。凜とした姿が幻想的な雰囲気を醸し出している。
「こいつを見せたかったんだ」
「まるで、ディセンダーの様だな。一本なのに、凜としていて…それでも自由に生きているように感じる」
「…そうか?オレはお前に似ていると思っていたんだが」
「…え?」
「白くて、凜とした姿がまるでお前の様だと思った…」
ヴェイグはほんのり顔を赤らめそっぽを向いた。その姿を見て、セネルも段々自分の頬が赤らんでいくのを感じる。
「…っ」
「お前にしか、見せたくない…ものだった」
「…ありがとう。すごく、嬉しい」
セネルの言葉にヴェイグはさらに顔を赤らめた。その分セネルも頬を赤らめていたが。
「そろそろ、帰るか。寒いだろ」
「…あぁ。なぁ、ヴェイグ」
「何だ」
「また、ここに連れてきてくれるか?その…ふ、二人…で」
「…!…分かった、また来よう」
「ありがとう」
二人は顔を見合せ、軽く手を繋ぎ、その場を後にした。
(俺は氷柱花に感動)
(オレは氷柱花に感謝)
end
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「白銀に魅せられて」様に提出のヴェイセネ小説です。
ドマイナーいっちゃったけど文章力アウトだけど大丈夫かな(ドキドキ
素敵な企画ありがとうございました^q