ふわりとした浮遊感。足が地についていない感覚。
ああ、夢だからか。
そう思ったが、段々と意識が上がっていくうちに夢ではなく本当に足が地に付いていないことに気づく。
微かな振動。そして妙に温かい。
重い瞼を無理矢理抉じ開けた。
「え、な!」
「おわっ」
近くにあったユーリの顔に驚いて離れようとすれば腕からすり抜けてボスッと下に落ちる。
丁度、下にベッドがあったおかげで怪我もない。
しかし、流石に背中が痛い。
けほっと空咳が出た。
「ったくあぶねぇ…」
驚いた。当たり前だ。眠気も飛んでしまう。
辺りを見渡せばどうやら自分の部屋のようだ。私服やら、武器やらが置いてある。
「お前は今何してたんだよ」
「何って…廊下で転がってたのを運んでやったんだよ」
「別に運ぶまでする必要はなかっただろ」
どうせ何処で寝ても一緒なのだ。
出来ればそっとして置いて欲しかった。
「あんなとこで寝てるの見てほっとけるかって」
「でもお陰で目が覚めた」
「そりゃ悪かったな」
ならもう一度寝ろよ。 自分に関係無いからと簡単に言いやがって。
ぶすりとしていたがふと、ユーリの顔に良い事思い付いた、といった類の笑みが浮かんだ。
「なんなら添い寝でもしてやろうか」
そう言うとのしかかられる。身長もあってか、やはり重い。
退かそうとする前にくるくると小さく丸め込まれてしまう。
これでは添い寝というより抱き枕のようだ。
「誰も添い寝なんて頼んでない!」
「また転げ出るよりはいいだろ」
くつくつと笑い声が聞こえてくる。
遊ばれてる。カチンとくるが動けそうにない。
(くそう)
心の中で唸る。
普段は感じない体温で温められたせいかまた段々と眠くなってきた。
無駄に大きなものに包まれて安心感に浸っている。
この拘束もきっと本気でやれば抜け出せるだろう。
しかし、なんとなくそれができないでいた。
相手を嫌いではないと思っている。その感情がなかなかに腹立たしくて面倒臭い。
これは観念するべきなのか。
行き場を失っていた両腕をユーリに回す。
「随分素直じゃねぇの」
「…五月蝿い」
言ってから目の前の胸板に顔を埋めた。
きっと今の自分は凄く眠いに違いない。だからこんな妙な事を考えている。
そう結論付けると眠気に身を委ね、とろりと眠気にさからっていた瞼を降ろす。
隠すように埋めた顔は何故だか赤く染まっていた。
−END−
サイトの方で何度も似たような文を書いてるような書いて無いような。
凄く最初に考えてたのと別の方向へ行っちゃったのは内緒の話。